なぜ私は毎日走っているのか。フルマラソン・サブ4(サブフォー)への道

50歳を過ぎた普通のサラリーマンが、ある出来事をきっかけに毎日走り続けるそのモチベーションの数々。

登山でトレーニング〜唐松岳

唐松岳は、北アルプスの山々の中で最も安心して日帰り登山ができる初心者向きの山である。
標高は2,696m。北の白馬三山との間に、北アルプス有数の難所である不帰嶮(かえらずのけん)がある。
長野市周辺にある北信五岳を制覇したら次はいよいよ北アルプスだ、という気持ちで我々長野の人間(長野市民)は乗り込んでいく。実は、長野市民にとって北アルプスはかなりハードルが高い。
北は白馬から南は御嶽山まで連なる山々の長いことおびただしく、そして岐阜県との県境に沿って南北に伸びる山脈と並び、長野県側にもう一つ南北の山脈がある。似たような複線の山脈は、富山県との県境にも立山連峰後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)という形で存在する。
つまり、巨大過ぎるのである(笑)。
幾重にも重なる山脈。その果てしない長さ。幅と厚みがあるために、見る角度によって山の形とそれぞれの位置関係が変わり、山々を把握することが全くできず、名前も覚えられない。
というのが最初の印象。
いずれにしても、足を踏み入れなければ始まらない。その最初の一歩に最も適している山が、唐松岳なのである。
毎月、満月の夜に開催されていた「満月酒り場」という飲み会。初めて参加した夜にそこで出会った超山ガールのY紀さんに登山靴を買うことを強要され(笑)、「初の北アルプス唐松岳よ。」と諭されてのチャレンジであった。
平成10(1998)年の長野オリンピックアルペンスキー会場でもあり、もともとそのゲレンデが世界的に有名だった白馬八方尾根から登る。
白馬といえば、「舩木ぃ〜〜(号泣)」のシーンで有名な、あの日本団体金メダルのジャンプ台も白馬にある。八方尾根の麓である。
スキーのリフトに乗って、八方尾根の上の方にある八方池の周辺を散策するだけであれば、普通の運動靴で全く問題ない。サンダルやハイヒールでも、覚悟を決めた強者であれば同じく問題ない。
登山者は、そこから先を山頂目指して黙々と岩がゴロゴロしている登山道を登っていくのだが、これが、それまでの登山と違って最初からかなり景色が素晴らしく、心底楽しい。
白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳の白馬三山を見ながら反対は遠く八ヶ岳から富士山を見ながら優雅に登っていけるのである。贅沢だ。
高山植物も多彩である。可憐だ。
その日は、平成28(2016)年8月11日の木曜祝日で、初めて山の日が国民の祝日となった年の山の日という、実に記念すべき日であった。
リオ五輪が開催真っ只中であり、その日は登山中に、柔道男子90km級のベイカー茉秋(ましゅう)と女子70km級の田知本遥がアベック金メダルを獲得、そして体操の内村航平体操男子個人総合で優勝し、オリンピック2連覇を達成したため、気分の高揚も最高潮だった。
コースタイムで4時間20分のところ、3時間少々で登る。5時スタートの8時着というイメージ。気分良く、身体が心地よく疲労する。
山頂手前の唐松山荘が見えてきたところで、食料なんかを下から運ぶのは、さぞかし大変なんだろうなぁと思った途端に頭の上をヘリコプターが大きな音とともに通過(笑)。アッという間に山小屋脇に網で吊るされた荷物を下ろして飛び去っていく。
山荘の尾根に立つと、富山県側の山脈、立山連峰が初めてその雄大な姿を現す。映画にもなったあの剱岳である。
登ってもいないのに、見ただけで背筋が思わずブルブルっとする。そんな威容である。
南側には五龍岳とその先の鹿島槍ヶ岳がジャンプしたら飛び移れそうなほど間近に感じる立体感で存在している。
鹿島槍ヶ岳日本百名山。2年後の8月19日にその頂に到達することになるのだが、その時はそんなことは露ほども考えていなかった。

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思わず日の丸を掲げてしまった記念すべき初の「山の日」