登山でトレーニング〜妙高山
妙高山2,454m。別名越後富士。新潟県にありながら北信五岳の一つに数えられ、その中での最高峰。カルデラの外輪山と山頂の溶岩ドームから成り、火打山(2,462m)、焼山(2,400m)とともに、頸城(くびき)三山と呼ばれている。
私は、2度目に登った平成29(2017)年10月28日のことが印象深い。というか、まだ2回しか登ったことがないのだが、現時点で、
「妙高山は、最も楽しく登山ができる山」
であると断言できる。
とにかく楽しいのである。起伏と変化に富んだ登山道は、ひと時も「飽き」を許さない。
それは、登山口の燕温泉のとにかく奥まった立地と寂れた感じ、秘湯感120点からジワジワと始まる。
山肌から流れ出る水は、ことごとく熱い。水ではなくお湯である。山全体がグツグツと煮えたぎっているかのような熱気を感じる。
この日は、実家がある長野市内を朝まだ暗いうちから出発し、登山口に着いた6時ごろでようやく明るくなってきた。わずかに見える山頂は既に白くなっており、雪の状態によっては途中から引き返すことも想定しながら登り始めたのだった。
妙高山の威容から来る何とも言えない恐怖感。負けるもんかと自分を鼓舞して歩いていく。
吊り橋を渡って惣滝を見ながら急登を上がる。そして何がどう血の池なのかはわからないが、血の池という表示がある血の池を越え、沢を伝い、胸突き八丁と呼ばれる急登をグイグイ登るとその先に天狗堂。
ここまでのコースタイムが3時間。その先、山頂まで2時間の合計5時間であるが、トレーニングとしては3時間あれば何とか登り切れる。
登るにつれ激しく変化するダイナミックな景色の移り変わり、紅葉の赤、雪の白、赤茶けた岩肌、どれをとっても美しい。山頂までの間、本当に飽きが来ない。驚異的な楽しさである(笑)。
妙高山は、“須弥山(しゅみせん)”とも呼ばれる。仏教界において、世界の中心にそびえる、果てしなく高い山を表す須弥山。戸隠山、白山とともに、山岳信仰の霊山として多くの修験道に崇められ、女人禁制を厳守されてきたという。あの空海上人も妙高山を直感で霊山と悟って修行の場としたというから、霊験あらたかであることもこの上ない。
最後の溶岩ドームの部分が最大の難所であり最も楽しい部分で、ここがクライマックスである。屏風のように切り立った岩肌を、垂れ下がる鎖を頼りによじ登り、眼下に広がる絶景に背中を押されながら進む。そしてゴツゴツした岩山をガッチリつかみながら頂上に到達するのである。
山頂は、360°のパノラマが広がる絶景である。
最高点は、南峰の2,454m。そのすぐ北にある北峰に一等三角点が置かれており、標高は2446m。撮影ポイントのチョイスにやや悩む。
雪に覆われた山頂の岩陰にあった寒暖計は5℃。このブログを書いている3月1日は、厳しい長野の冬を越えたばかりなので、5℃というとかなり暖かな感じだが、10月下旬の5℃は、極寒である(笑)。身体がまだ夏仕様で、装備もウインドブレーカーという軽装。雪の世界に放り出されたらそれは寒い。
そそくさと下山し、天狗堂のさらに下、称名滝と光明滝のところまで下りてから用意したランチセットでインスタントの塩ラーメンを作り、パンやサバ缶とともに食す。無事に下山できた安堵感と相変わらずのいい景色に癒されて、気分は最高である。
下山後は、無料の露天風呂で疲れを癒す。これもまた素晴らしい。吊り橋の下にある「河原の湯」は混浴。反対側ルートの「黄金の湯」は男女別で、ともに燕温泉の醍醐味を存分に味わえる名湯である。
登山客だけでなく、燕温泉目当ての湯治客も足を運んで来るので、なかなかの賑わいである。
気分良く入っている湯治客のおじさんが満足そうに上機嫌で温泉談義をしているので、こちらまでつられて気分良くなってくる。
やはりここは最高なんだ。間違いない(笑)。
さらなる秘湯「惣滝下の湯」「称明滝の湯」という秘湯中の秘湯があるそうなので、今度来る時はぜひ体験してみたい。
近くにお越しの際は、妙高山の山岳信仰の拠点となっている関山三社権現(現在の関山神社)にぜひ立ち寄って参拝していただきたい。その崇高で神聖なる信仰の歴史は、私もその制作に携わった『妙高村史』に詳述されている。