なぜ私は毎日走っているのか。フルマラソン・サブ4(サブフォー)への道

50歳を過ぎた普通のサラリーマンが、ある出来事をきっかけに毎日走り続けるそのモチベーションの数々。

献血できない身体。

私は、献血が大好きである。
なぜか。
お菓子が食べ放題で、飲み物も飲み放題。ホットもアイスもチョイスできて、猫舌用にぬる目の設定までできる。場所によってはハーゲンダッツ等のアイスクリームまでいただける。それでいてお金は全くかからない。無料でそれほどまでに優遇される場面は人生でほかに見当たらない。ただただ嬉しい。ワクワクが止まらなくなってしまうのである。大人なのに(笑)。
そして、カウンターにいる受付の事務職員の皆様はじめ、素敵な魅力の看護師さん、可愛らしい看護師さんや、診察のドクターまでもが皆ホスピタリティに溢れまくっている。つまり、「神様扱い」をしてもらえるのである。そこも、かなり嬉しい。
こんなことを言うと「普段、どんな扱いを受けながら生きているんだよお前は!」というツッコミを受けそうなのでこれ以上説明するのは正直ためらわれるが、敢えて言おう。この厚遇、かーなーりー、嬉しい(笑)。
そんなわけで、単純な私はウキウキと舞い上がりながら毎回気持ち良くなり、とってもハッピーな気分でせっせと献血に通っているのだった。
 
献血には、全血献血成分献血がある。全血献血には400mL献血と200mL献血があり、成分献血には血小板成分献血血漿成分献血がある。成分献血は、成分採血装置を使って血小板や血漿といった特定の成分だけを採血し、体内で回復に時間のかかる赤血球を再び体内に戻すという方法。身体への負担も軽く、多くの血漿や血小板を献血できるメリットがあるが、時間がかかるために、献血時間の予約をしなければならない場合が多く、忙しい(忙しくしている)私のライフスタイルには合わないので、私は専ら全血献血をしている。しかもしっかり400mLである。
 
そんな楽しい私の献血生活に、ある日突然、楽しくない事件が起こった。それは、平成29(2017)年8月16日に28回目の献血を行って以来、再び献血が可能となる12週間後に、献血をしようとした時に起こった。
 
「はい、残念ながら、今回は、お休みしてください。ご協力、ありがとうございました。」
 
え、え、え、どゆこと?
俺、健康だよね?
超がつくほど健康だよね?
何? 何? 何? どゆこと?
 
自分で自分に何が起こっているのか、すぐには理解できず、かなり混乱した私であった。
献血をするためには、その人が献血をしても大丈夫なのかどうか、献血に耐え得るに十分な体力と体調を維持できているかが重要であり、それを、献血の直前に採血によって行われるチェック、つまり、献血をするための試験にパスする必要があるのだった。そこで私は、その試験に、見事に「不合格だった」のである。
どんなチェックか。まず、血圧。そして脈拍。これらはどうやら大丈夫だったようである。そして、ヘモグロビン濃度を判別するための血色素量の測定をするのだが、ここで、あえなく落第、ということのようであった。
400mL献血の場合、男性では、1dL中に血色素量が13.0g以上ないといけないらしい。そういう決まりのようなのである。いくら本人が、
「大丈夫です! 僕はいたって健康ですから、大丈夫です! 400mL血を採ってください! もし何かあってもそれは僕の責任ですから! お願いします!」
と頼み込んでも、決まりは曲げられない。
「次回、体調のいい時にお願いします。」
となってしまうのである。
せっかく献血ルームまで出向いていったのに、ジュースを飲んだだけで帰らなければならないという、この何とも言えない敗北感。これはこたえた。辛かった。
簡単に言うと、貧血である。
説明を聞くと、長距離ランナーは、貧血になりやすいのだそう。珍しくはないとのことであった。しかしそう言われてみても、自覚症状が全くないので戸惑いは果てしなく大きい。
そのことは、ネットなどで見てみると既に当たり前の話のようで、ランナーたちはそれぞれ鉄分のサプリメントを飲むなどして対策を立てているらしい。
そして私は、栄養摂取や睡眠時間を増やすなど、多少のにわかケアをしつつ、100円ショップで買った鉄のサプリも飲みながら、数か月後に再チャレンジをしたのであった。
が、結果はまたしても不合格。
むむむ、手強い。
実際、この頃は、第1回松本マラソンの後で、あのエリック・ワイナイナ氏からの教えを愚直に守って走行距離が飛躍的に伸びた時期であった。その結果、私は「献血ができない身体」になってしまったようなのである。
このままこのランニング生活を続けていくのであれば、以後もずっと献血ができない状態が続くことが濃厚である。大好きな献血ができない。あの、神がかり的なホスピタリティを味わうことができない。何とも寂しい限りである。私はどんどん暗〜〜い気持ちになっていった。
しかしそこで、パッと光が差すような出来事が起こる。それは、採血検査を担当してくれた可愛らしい看護師S藤さん(仮名)が私に掛けてくれた一言だった。
 
「いいトレーニングが出来てる証拠ですよ。」
 
何という素晴らしい言葉なんだろう。最高のペップトークである。後ろ向きな考えから前向きな考えに、ネガティブシンキングからポジティブシンキングへ、この時、私の気持ちは大きな大きな大転換を迎えたのであった。言葉一つで人の心がここまで大きく変えられてしまうという、人生において初の実体験であった。何と素晴らしいコーチングであろうか。
ありがとうS藤さん。本当にありがとう。
S藤さんのおかげで、私はこれからもがんばっていけそうです!
 
そしてその後、平成31(2019)年1月14日。年末年始で走行距離が減ったということもあり、私は不合格となってから実に3回目の再チャレンジで、無事に29回目の献血をすることができたのであった。
 

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ランナーにとって献血ルームのハードルは意外と高い