なぜ私は毎日走っているのか。フルマラソン・サブ4(サブフォー)への道

50歳を過ぎた普通のサラリーマンが、ある出来事をきっかけに毎日走り続けるそのモチベーションの数々。

ランニングコースいろいろ〜朝日山観世音コース。

南無阿弥陀仏と念仏を唱えるのは、極楽浄土を願うため。
それとは対照的に、現世での望みを叶えてくれると言われ俗世間的な願いを一身に引き受けているのが観世音菩薩、いわゆる観音様である。この現世利益(げんぜりやく)専門の仏様は、なぜか切り立った崖の中腹に際どく建てられた観音堂の中にある。有名な京都の清水寺も、切り立った崖の上(清水の舞台)に御堂があるので、たぶん中に相当な観音様がいらっしゃるのであろう。
 
さて、長野で最も有名な観音様の一つに、朝日山観世音がある。長野市街地の西、旭山という標高785mの山の中腹にある。
本尊は聖観世音菩薩といい、現世の願いをとてもよく叶えてくれる(との期待がものすごく集まっている)のである。特に学業成就、志望校への合格に威力を発揮するということで、昔から(少なくとも私が小さい頃から)篤く頼りにされている。
この観音様は、元々旭山北面の岩屋に祭られていた。私が小さい頃は、裾花川沿いの里島発電所から登る登山道があって、その細い道は参拝客で賑わっていた。
吊り橋を渡った先にある登山口から既に線香の匂いに包まれており、ものすごく霊的な感じがしていた。そして細く険しい登山道を登った先にある、薄暗いほら穴のような祠の中に観音様がいた。思い返すと恐山のような強烈なオドロオドロしさであり、願い事をしに行くのか悪霊を祓ってもらいに行くのか、子どもにはわけがわからなかった(笑)。
しかし、そんな御利益あらたかな観音様も、いつの間にか旭山の南側に遷り、とっても綺麗で健康的な観音堂の中から庶民の願いを明るく叶えるようになっていた。アプローチも自家用車でスイスイスイ、である。遷ったのは昭和57(1982)年の2月。参道が急で危険であるという理由からであった。
 
その朝日山観世音。入試の時期には特に参拝者が多い。参拝記念の芳名や願いが書かれた大学ノートが20冊ほどあり、願がけの千羽鶴が数多く奉納されているなど、篤い信仰を集めていることが分かる。
立派な拝殿は、毎月1日と、毎日曜日に地元の当番の方が開けてくれるので、中に上がって観音様に直接お参りをすることができる。また、5月1日と10月1日には祭典が行われ、甘酒が振る舞われて賑わうそうである。
 
前置きが長くなったが、観音様に願い事をするときは、観音様に到達するまでにできるだけ苦労して行ったほうがいいとされている。観音様でなくてもお参り全般にそうなのかもしれないが、とにかく、車に乗るより歩いて、そしてその歩く距離は長ければ長いほど、よい。
私は、二男の高校合格や野球部での活躍、そして大学受験など、事あるごとにこの観音様に願がけをしてきたのであるが、何とかして願いを叶えていただこうと、その熱い親心から、
 
実家から走って行っていた(笑)。
 
その願いが叶ったか儚(はかな)く露と消えたのかは置いておいて(苦笑)、とにかく私は、交通機関を使わず、全て自分の足で赴き、参拝を続けていた。
 
実家から朝日山観世音の観音堂までは、偶然にもジャスト10kmである。長野市街地を抜け、麓の小柴見地区までが7kmほど。そこから観音堂までの3kmは、急坂も急坂。口から心臓が出そうなほどにキツい登り坂なのである。
そんな坂道を、全力で、しかし歩くようなスピードで(それでしか進めない!)駆け上がっていく(駆けれてないけど(笑))。
イノシシに出会ったこともある。ランナーとすれ違ったこともある。ここは、獣が跋扈(ばっこ)する道なのである。
 
ラスト1km。最後の力を振り絞ってスパート(気持ちだけw)し、観音堂の前でアプリを止める。ジャスト10kmである。
この10kmは、あくまで個人の感想ですが、
 
「大手町から芦ノ湖
 
な感じである(笑)。
いやいや規模としては10分の1以下ではあるが、往路で登り、復路で下る、と、まさに堂々の箱根駅伝の再現なのである。毎日のランニングを続けていることで、こんな形の楽しみが生まれるなどということは、子どもの頃の自分からは全く想像もつかなかった。まさか、家から旭山の観音様まで走って行くことになろうとは。。。
イメージは、
「恐山から箱根山(いずれもカルデラ火山(笑))」
である。人生は面白い。
 
参拝し、記帳し、願い事を胸にしまって復路に挑む。願がけついでに峠走がキッチリできて足腰がしっかりと強化されるのも最大級のコスパの良さである。
箱根のランナー気分で楽しめる最強トレーニング。それが朝日山観世音コースの最大の魅力である。

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長野市街地が一望できる魅力あふれるコース